Salesforceを「ひとり」もしくは「他業務と兼任」で見ている方の中には、

  • 設定変更や質問の依頼が、すべて自分に集中する
  • 自分が動けないと、対応がそこで止まってしまう
  • 引き継ぎ資料もなく、気づけば“自分しか分からない”状態になっている
  • 改善したいことは山ほどあるのに、手が回らない

といった状態に、心当たりがあるのではないでしょうか。

これは、担当者の能力や気合の問題ではありません。ひとり(兼任)で回すことを前提にした「運用設計」ができていないだけ、というケースがほとんどです。

この記事では、専任のSalesforce管理者がいない・兼任で見ているという方に向けて、消耗せずに回すための運用設計を「5つの型」に整理して解説します。

実際の現場でつまずいたこと・効いたことも交えて紹介するので、今まさに一人で抱えている方の参考になればと思います。

結論|ひとり管理者の問題は「気合」ではなく「仕組み」で解く

先に結論を言うと、ひとり管理者が消耗しないために必要なのは、頑張りを増やすことではなく、依存を減らす仕組みです。

ポイントは、大きく3つに整理できます。

  • 依頼を減らす・整える:思いつきの口頭依頼に振り回されない受け方をつくる
  • “自分しか分からない”を減らす:命名・記録・自動化で、属人化を薄くする
  • 現場に合わせて作る:押し付けではなく、使われる形にして定着させる

この記事の「5つの型」は、すべてこの3つのどれかに対応しています。

なぜ“ひとり管理者”は消耗するのか

ひとり管理者がしんどくなるのは、たいてい次のような構造があるからです。

1. 依頼が無限に湧き、しかも割り込みで来る

「この項目足して」「この数字どうやって出すの」といった依頼が、口頭・チャット・思いつきでバラバラに飛んできます。

1件1件は小さくても、割り込みが続くと本来やりたい改善が一向に進みません。

2. 自分が止まると、業務も止まる

管理者が稼働していないと、対応がそのまま遅れます。さらにやっかいなのが、気づかれない抜け漏れです。

たとえば退職者のユーザー無効化のようなセキュリティ対応は、自分が忘れると誰も気づけません。

3. “正解”が用意されていない

リードや商談にどんな項目を持たせるべきか、入力漏れをどう防ぐか——こうした「組織としての正解」が無いところから、一人で考えて決めていかなければならない場面も多くあります。

つまり消耗の原因は、努力不足ではなく、「依頼の受け方」「属人化」「正解のなさ」が設計されないまま運用が回っていることにあります。

【事例】“正解がない”ところから始めた現場で起きたこと

あるBtoB企業の運用に関わったとき、最初にぶつかったのは「そもそも組織として“正解”がない」状態でした。

リードや商談にどんな項目を持たせるか、入力漏れをどう防ぐか——そういった土台から一緒に考える必要があり、ルールづくり自体に時間がかかりました。

さらに難しかったのが、決めたルールがなかなか定着しないことです。

人数が増えるほど、“情報を入力しない人”が一定数出てくるのは避けられません。ルールを作って終わり、では現場は動きませんでした。

転機になったのは、やり方を「押し付け」から「現場に合わせる」に変えたことです。具体的には、

  • Salesforceに関する依頼・質問は、専用のSlackチャンネルに一本化する
  • 口頭で来た依頼も、必ず文章に起こしてもらう
  • 新しいレポートやルールを作る前に、営業部に現場ヒアリングをする

この3つを徹底したことで、ようやく「使われる」状態に近づきました。

逆に、こちらが「便利だから使ってよ」と一方的に提示したものは、ほぼ使われませんでした

レポートでもダッシュボードでもフローでも、現場の声を聞かずに作ったものは定着しない——これは何度も痛感したポイントです。

兼任でも回る運用設計:5つの型

ここからは、上の経験を踏まえて「ひとり(兼任)でも回る」ための具体的な型を5つ紹介します。全部を一度にやる必要はありません。

できそうな1つから始めるのがおすすめです。

型1|依頼の窓口を1つにする(口頭をやめ、文章にする)

まず効くのが、依頼の入口を1か所にまとめることです。

おすすめは、Salesforce専用のSlackチャンネルを作り、「Salesforceのことは必ずここで聞く」というルールにすること。

チャンネルなら画面キャプチャも一緒に共有できるため、状況が伝わりやすく、双方にとってラクになります。

▶Salesforceの依頼・質問は専用チャンネルに集約し、口頭ではなく文章+キャプチャで受ける

ポイントは、口頭依頼を文章に起こしてもらうこと。口頭だと細かい条件が詰め切れず、後から「思っていたのと違う」と手戻りが発生しがちです。

文章にしておくだけで、認識ズレも、後から見返す手間もかなり減ります。

型2|命名ルールと項目設計で“事故”を防ぐ

次に、項目の命名と設計です。ここが緩いと、後から確実に苦しくなります。

たとえば、カスタム項目のAPI参照名が Field4__c のような自動採番のままになっていると、後から見たときに「これは何の項目だっけ?」となり、調べ直しが発生します。

▶ラベルと参照名がバラバラだと、後から自分でも分からなくなる

最初に、

  • 参照名の付け方(例:用途が分かる英単語にする)
  • 似た項目を増やさない(“とりあえず追加”をしない)
  • 最低限のメモを残す(何のための項目か)

といったルールをゆるくでも決めておくと、未来の自分の調査時間を大きく減らせます

命名ルールは、共有レポートの運用でも同じように効きます(参考:Salesforceのダッシュボード表示が急におかしくなる原因No.1)。

型3|変更管理で「誰が何を触ったか」を追えるようにする

属人化を薄くするうえで地味に効くのが、変更を記録・把握できる状態にしておくことです。

Salesforceには「設定変更履歴の参照(Setup Audit Trail)」があり、誰がいつ何を変えたかを確認できます。トラブル時に「何が変わったのか」を切り分ける起点になります。

▶設定 > 「設定変更履歴の参照」。直近の変更を誰がいつ行ったか追える

あわせて、棚卸しの観点も決めておくと安心です。

たとえば退職者のユーザー無効化のように「忘れると誰も気づけない」対応は、月次でチェックする運用にしておくと、ヒヤッとする事故を防げます。

型4|自動化で“手作業の依頼”と入力漏れを減らす

「入力を忘れる」「毎回手で直す」といった作業は、Flowで自動化することで依頼そのものを減らせます。

たとえば、レコード作成時に必須項目が入っているかをチェックする、といった仕組みを作っておけば、入力漏れを人の注意力に頼らずに防げます。

▶行動の作成時に必須項目の入力をチェックするフローの例。“言わなくても守られる”状態にする

自動化は「自分がやる作業」だけでなく、「自分に来る依頼」も減らしてくれます。

手作業で対応している繰り返しタスクがあれば、自動化の候補です。

型5|現場ヒアリングをしてから作る(定着の肝)

最後が、いちばん大事な型です。作る前に、現場の声を聞くこと。

レポートもダッシュボードもフローも、こちらが「いいでしょ、使ってよ」と提示しただけでは、ほぼ使われません。それは結局、作り手側のポジショントークだからです。

「どの数字を、いつ、何のために見たいのか」を現場にヒアリングしてから作ると、同じものでも定着率がまるで変わります。

少し遠回りに見えても、ヒアリング → 作る → 使われるの順番を守るのが、結局いちばんの近道です(そもそも「見たいデータがレポートで出せない」ときは、「そのデータ、レポートで取れません」を解決するカスタムレポートタイプ入門 もあわせてどうぞ)。

メニューや画面の見せ方を業務に合わせて整えるのも、この「現場に合わせる」発想の一部です(参考:Salesforceの「アプリケーション」とは?表示メニューを整理する基本設定)。

それでも一人で抱えないために

ここまで5つの型を紹介しましたが、ひとり管理者の本当の難しさは、「これを全部、一人で考えて回す」こと自体にあります。

なお、SalesforceだけでなくAccount Engagement(旧Pardot)も兼任で見ている場合、同じ「運用設計が無いまま」の状態に陥りがちです。

AEが“高いメール配信ツール”で止まっているときの立て直しは、Account Engagement(旧Pardot)が“高いメール配信ツール”で終わる3つの原因と立て直し方にまとめました。

「何から手をつければいいか分からない」「決めたいけど壁打ち相手がいない」というときは、外部の伴走を使うのも一つの手です。

ただ、外部に頼むといっても「作業だけ代行してもらう」のと「一緒に運用を回す伴走型」では結果が大きく変わります(参考:「設定代行」で失敗しないために|代行と伴走支援の違いと向き不向き)。

Steadmarkでは、Salesforceの運用整理・属人化の解消を、週1の定例とSlack相談で一緒に進める伴走支援をしています。

詳しくはサービスページをご覧ください。

まとめ

ひとり(兼任)でSalesforceを回すなら、頑張りを増やすより、依存を減らす仕組みをつくるのが近道です。

今回の5つの型を整理すると、次のとおりです。

  • 型1:依頼の窓口を1つにする(口頭をやめ、文章+キャプチャで受ける)
  • 型2:命名ルールと項目設計で“事故”を防ぐ
  • 型3:変更履歴で「誰が何を触ったか」を追えるようにする
  • 型4:自動化で手作業の依頼と入力漏れを減らす
  • 型5:現場ヒアリングをしてから作る(定着の肝)

すべてを一度にやる必要はありません。まずは**型1の「窓口を1つにする」**だけでも、依頼の混乱はぐっと減ります。できる1つから始めてみてください。

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