そこそこの費用をかけてAccount Engagement(旧Pardot)を導入したのに、

  • 実際に使っているのは、一斉メールの配信機能だけ
  • スコアリングもEngagement Studioも、初期設定のまま手つかず
  • 「効果は?」と聞かれても、答えられるのは「開封率◯%」まで

——そんな状態に、心当たりはないでしょうか。

Account Engagementは本来、見込み客を自動で育て(ナーチャリングし)、商談化への貢献まで測れる「マーケティングオートメーション」のツールです。

にもかかわらず、実質“高いメール配信ツール”になってしまっている——これは決して珍しいことではありません。

大事なのは、これが機能が難しいからではなく、「運用設計」が抜けているのが原因だという点です。

この記事では、Account Engagementを導入したものの配信だけで止まっている運用担当・マーケ担当の方に向けて、配信ツール化してしまう3つの原因と、まず何から立て直せばいいかを、運用支援の現場目線で解説します。

結論|“配信ツール止まり”は、機能ではなく運用設計の問題

先に結論をお伝えすると、Account Engagementが配信ツール止まりになるのは、ツールが悪いからでも、担当者の能力の問題でもありません。

「誰が・何を・どう回すか」という運用設計が無いまま導入がゴールになってしまっている——これがほぼすべてです。

配信ツール化のサインは、大きく3つに整理できます。

  • 育てる仕組みが無い:Engagement Studio(シナリオ)が空、または作ったきり放置
  • 見込み度が見えない:スコアリングが初期設定のままで、ホットな見込み客が誰か分からない
  • 価値を説明できない:効果測定が「開封率」で止まり、商談・売上への貢献が示せない

以下では、この3つを1つずつ見ていきます。

そもそもAccount Engagementは何をするツールだったか

原因の前に、前提を短く整理します。Account Engagement(旧Pardot)でできることを分解すると、こうなります。

  • メール配信:見込み客と接点を持つ「入口」。ここは多くの会社が使えている
  • スコアリング:見込み客の反応を点数化し、「誰が今アツいか」を可視化する
  • Engagement Studio:条件に応じてメールや分岐を自動で流す「育成(ナーチャリング)の自動化」
  • レポート:メール単体でなく、商談・売上への貢献まで測る

ポイントは、メール配信はこの4つのうちの“入口”でしかないということです。

スコアリングとEngagement Studioとレポートが動いて初めて、「マーケティングオートメーション」になります。

裏を返せば、配信だけを使っている状態は、用意されている武器の大半を眠らせているのと同じです。

【事例】“高いメール配信ツール”になっていた現場で起きたこと

あるBtoB企業の運用に関わったとき、まさに「Account Engagementが実質メール配信ツールになっている」状態に出会いました。

Engagement Studioもレポート機能も揃っていて、本来ならROI(費用対効果)まで測れる。うまく使えばナーチャリングで顧客を掘り起こすこともできる。

それだけの土台があるのに、メールを配信して終わりになっていました。

なぜそうなっていたのか。

ひとつは、単純に使い方の難易度です。

たとえばEngagement Studioで効果的なシナリオを組もうとすると、Account Engagement側だけでなく、もともとのSalesforceのオブジェクト構成やカスタム項目まで理解したうえで設計する必要があります。構築にもある程度の時間がかかります。

スコアリングも同じで、デフォルトの設定は用意されているものの、そのままでは正直まともに機能しません

「見直すところからスタート」が前提になるため、着手のハードルが高いのです。

とはいえ、放置していて“何かが壊れる”わけではありません。

損はしないけれど、得もできない

うまく使えば見込み客が勝手に育ってくれる非常に有用なツールなのに、その果実だけを取り逃している——そこが一番もったいないところでした。

配信だけで終わる3つの原因

事例の状態を、もう少し一般化して3つの原因に分けて見ていきます。

原因1|育てる仕組み(Engagement Studio)が動いていない

配信ツール化のいちばん分かりやすいサインが、Engagement Studioが空、または「作ったきり放置」になっていることです。

Account EngagementのEngagement Studio一覧画面
▶稼働プログラムがごくわずかで、しかも1年以上“更新済み”が止まっている=作ったきり放置のサイン

シナリオが動いていないと、見込み客への働きかけは「思い出したときに一斉送信」だけになります。

これでは、資料をダウンロードしてくれた人を数日後にフォローする、といった自動の掘り起こしが一切効きません。

本来アツいはずの見込み客を、放置してしまっている状態です。

原因2|スコアリングが初期設定のままで、見込み度が見えない

次が、スコアリングです。Account Engagementには初期スコアリングルールが用意されていますが、多くの現場でこれが初期値のままになっています。

スコアが機能していないと、「今どの見込み客に営業がアプローチすべきか」が分かりません。

せっかくメールで接点を持っても、熱量の高い人を営業に渡す仕組みが無いため、配信が商談につながらないのです。

原因3|効果測定が“開封率止まり”で、価値を説明できない

3つめが、効果測定です。配信の結果を見るとき、確認しているのが開封率・クリック率までで止まっているケースが非常に多く見られます。

Account Engagementのメールレポート(開封率)画面
▶配信到達率・開封率・クリック率は見えるが、「この配信が商談にいくつ効いたか」までは追えていない

開封率15%、クリック率9%——数字としては見えます。

ですが上司から「で、それは売上にどうつながったの?」と聞かれると答えられない。

商談・売上への貢献を示せないと、Account Engagement自体の費用対効果を説明できず、投資が縮小し、さらに使われなくなる……という悪循環に入っていきます。

立て直しの一歩|まず何から手をつけるか

ここからが本題です。3つの原因を一気に潰す必要はありません。

簡単なことを1つ、動かすところから始めるのがおすすめです。

Step1|欲張らず「簡単なシナリオを1本」動かす

まず効くのが、Engagement Studioでとにかく簡単なシナリオを1本作って回してみることです。

複雑な分岐は要りません。

たとえば「あるリストに入ったら、週1回・計4回、特別なメルマガを送る」——最初はその程度で十分です。

難しいことを考えず、まず1本動かして“育成が回っている状態”を体験することが、立て直しの起点になります。

Account EngagementのEngagement Studioで作った基本シナリオ
▶まずは1本。「リスト登録→週1メール×4回」くらいのシンプルなものでいい

ありがちな失敗が、1本のシナリオにあらゆる分岐を詰め込もうとすることです。

ここは実際にやって遠回りだと痛感したところで、複雑なシナリオは基本的に作る必要がありません。

小さく作って動かし、あとから育てるほうが確実です。

Step2|スコアリングを「ゼロリセット」して組み直す

スコアが初期設定のままなら、思い切って一度ゼロにリセットして、「どんなアクションに何点を与えるべきか」を棚卸しするところから始めます。

Account Engagementのスコアリングルール設定画面
▶スコアリングの設定をデフォルトからゼロに戻した様子

初期値をだましだまし使うより、自社の見込み客の動き(資料DL・特定ページ閲覧・メール反応など)に合わせて点数の根拠を決め直すほうが、結果的に早く「営業が信じられるスコア」になります。

ここは営業と目線を合わせながら設計するのがコツです。

Step3|「開封率」でなく「商談にいくつ効いたか」を見る

効果測定は、見る指標を開封率から商談貢献へずらします。

Account EngagementのレポートやSalesforce側のキャンペーン→商談の紐づけを使い、「この配信・このシナリオが、商談にいくつ効いたか」を追えるようにします。

たとえば、「失注商談の掘り起こし」メールを送り、開封・URLクリックした人をSalesforceのキャンペーンに記録しておく。すると、その反応者に紐づく商談が「影響を受ける商談」として見えるようになります。

Salesforceキャンペーンの影響を受ける商談(キャンペーンインフルエンス)画面
▶メール反応(開封・URLクリック)をキャンペーンに記録し、そこから「影響を受ける商談」を紐づける。開封率でなく“どの施策が商談に効いたか”が見える

見る数字が変わると、報告の質が変わります。

「開封率◯%でした」ではなく「この施策から商談が◯件生まれました」と言えるようになると、Account Engagementの価値が説明でき、投資縮小の悪循環から抜けられます。

レポートやダッシュボードの整え方は、Salesforce側でも同じ発想が効きます(参考:Salesforceのダッシュボード表示が急におかしくなる原因No.1)。

Step4|運用の型・担当・見直しサイクルを決めて“定着”させる

最後に、立て直しを一過性で終わらせないために、「誰が・いつ・何を見直すか」を決めて運用に定着させます

シナリオもスコアも、作って終わりでは再び形骸化します。

月1でスコアの効き具合を見る、シナリオを1本ずつ増やす、といった軽い運用サイクルを回すことが、属人化と放置を防ぎます。

このあたりの「作って終わりにせず、回る状態にする」考え方は、Salesforceの運用設計とも共通します(参考:Salesforceの“ひとり管理者”が消耗しない運用設計|兼任でも回す5つの型)。

それでも一人で立て直すのが難しいときは

ここまで立て直しの手順を紹介しましたが、実際の難しさは、「Salesforceの構成を理解したうえで、スコアもシナリオもレポートも一人で設計し直す」こと自体にあります。

着手のハードルが高く、後回しになりがちなのも無理はありません。

「何から手をつければいいか分からない」「壁打ち相手がほしい」というときは、外部の伴走を使うのも一つの手です。

このとき「導入設定だけ代行してもらって運用が置き去りになる」と、また同じ形骸化を繰り返しがちです。代行と伴走の違い・向き不向きはこちらで整理しています(参考:「設定代行」で失敗しないために|代行と伴走支援の違いと向き不向き)。

Steadmarkでは、代行ではなく“中の人が回せるようになる”ことをゴールに、Account Engagementの立て直しを一緒に進める伴走支援をしています。

詳しくはサービスページをご覧ください。

まとめ

Account Engagement(旧Pardot)が“高いメール配信ツール”で終わってしまうのは、機能のせいではなく、運用設計が抜けているからです。

配信だけで終わる3つの原因は、次のとおりでした。

  • 原因1:育てる仕組み(Engagement Studio)が動いていない
  • 原因2:スコアリングが初期設定のままで、見込み度が見えない
  • 原因3:効果測定が“開封率止まり”で、価値を説明できない

そして立て直しは、次の順で。

  • Step1:欲張らず「簡単なシナリオを1本」動かす
  • Step2:スコアリングをゼロリセットして組み直す
  • Step3:「開封率」でなく「商談にいくつ効いたか」を見る
  • Step4:運用の型・担当・見直しサイクルを決めて定着させる

全部を一度にやる必要はありません。まずは、簡単なシナリオを1本作ってみる。配信だけになっているAccount Engagementの立て直しは、そのくらい小さな一歩から始められます。

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